トランプ氏のTPP離脱宣言で日本の食用油はどうなる?

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つい先日、アメリカの大統領選挙が行われ、優勢と言われていたヒラリークリントン氏を破り、共和党のドナルド・トランプ氏が次期大統領に決まりました。
トランプ氏は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)脱退を掲げており、政府与党が参加の方向で進めてきたTPP法案も採決されたものの、先行きが不透明となりました。

とりわけ、農業分野では、TPP同意による関税の撤廃により米国などから安い農作物が流入し日本の農業に大きなダメージを与えるとして、農業団体が反対しています。 食用油業界も例に漏れず、TPPが進展すると海外からの安価な製品が流入し国内の販売価格が低下するとともに、輸入製品が増加し国内製造品の販売量が減少するリスクがあるとしてTPPに慎重な立場をとっています。

世界の食用油生産事情

現在、世界の人口は約73億人と推測されています。 10億人に達成したのは18世紀に突入したばかりのころで、 それからわずか200年の間に、7倍に伸びています。人口が増えれば、当然のことながら食糧生産も増加します。

なかでも食用に使われる植物油の生産量の増加は顕著で、 2001年頃は1億トンにわずかに届かない量でしたが、2014年には1億7千トンを超えました。
食用油といっても、種類はさまざまです。 ここでざっと食用油がどんな国で生産されているのかを見ていきましょう。

世界一生産量が多い食用油は?

世界でいちばん多く生産されている食用油は何かご存知でしょうか?
正解は、パームの果肉から作られるパーム油なのです。

パーム油はアブラヤシという木の果肉から採れる油で、常温では固形状です。 これを溶かして揚げ油としてカップラーメンやポテトチップスの製造過程として使われています。固形の状態でも市販のマーガリンやアイスクリーム、チョコレートなどで使用されます。 製品の成分表示には「植物油脂」としか書かれていないことも多く、パーム油が使われていることに気づかないことも多いです。

パーム油は、インドネシアとマレーシアが全世界の生産量の85%以上を占め、 2014年には約6000万トンが生産されています。

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日本人にお馴染みの菜種油の生産国は?

生産量第二位が大豆油で、その名のとおり大豆が原料です。 おもな生産国は中国、アメリカ、ブラジル、アルゼンチンで、 この4カ国で全世界の生産量の8割近くを占めます。 生産量は約4700万トンです。

第三位は、日本の食卓になじみの深い菜種油です。菜種油の原料はセイヨウアブラナです。 生産量ランキングは中国、ドイツ、カナダ、インド、フランスに次いで日本ですが、日本の生産量は世界総生産量約2700万トンのわずか5%弱の約110万トンとなっています。 国内では北海道が圧倒的に多く、青森県、福島県とつづきます。

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第四位は、ひまわり油です。 全世界の生産量は約1500万トンで、うちウクライナとロシアが約50%を占めております。

第五位以降は生産量が1ケタ違ってきます。 綿実油は約480万トン、落花生油はは約360万トン、とうもろこし油は約320万トン、ヤシ油は約300万トン、人気が高いオリーブ油は意外なことに約260万トンしかないのです。 主要な生産国は、綿実油は中国とインド、落花生油は中国、 とうもろこし油はアメリカ、ヤシ油はフィリピンとマレーシア、オリーブ油はスペインとなっています。

日本では、これらの植物油の原料となる大豆、トウモロコシ、ナタネを輸入に頼っており、 純粋な国産原料を元にした食料油の生産は極めて少ない状況にあります。


付加価値創出が日本の競争力に

日本で生産される主な食用油は、菜種油(約110万トン)、大豆油(約40マントン)、とうもろこし油(約8万トン)ですが、ヤシ油以外は全国各地で造られています(国産原料に限定した場合)。 そしてなかには、地域の活性化につながると期待される食用油も少なくありません。

例えば、ひまわり畑が観光名所として知られる北海道名寄市では、 名寄市立大学の道北地域研究所が開発した新品種のひまわりの種子を使って 「北の耀き」というひまわり油を名寄給食センターが製造し、名寄商工会議所が販売しています。 この新品種のひまわり油は、善玉コレステロールを下げずに悪玉だけを下げるというオレイン酸を多量に含み健康に良いというコンセプトで開発されました。ひまわりの種子は、100%名寄産のみ使用し、昔ながらの圧搾法にこだわり、化学薬品・添加物を一切使用せず、仕上げています。

このような取り組みは、地域の活性化にもつながります。また安全性や高品質など高付加価値の製品は、「日本ブランド」の農産物の競争力の源泉として期待されています。

今後のアメリカのTPP政策の行方や、それが日本の農業や食料事情にどのような影響を及ぼすのか未知数ではありますが、 TPPが振り出しに戻ったことで、私たち消費者としても身近な食というテーマとして、日本の農業はどうあるべきか、考える機会がやってきたのかもしれません。